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執筆者の写真LAGS2 Reporter

U2W Part2 #1

U2W Part2の第1回(全体の第七回)のスピーカーはカナダ、トロント大学に留学中の近藤良平さんです。




 

今日の内容

  • 近藤さんについて

  • 生い立ちから留学に至るまで

  • 留学生活

  • トロントのランドスケープ

  • コロナ禍における話

  • これからの話

 

近藤さんこんな人

  • 大阪府枚方市生まれ

  • 武蔵野美術大学造形学部建築科卒業

  • トロント大学留学中

  • 昆虫や魚飼育好き









 

生い立ちから留学に至るまで


小学校まで

子どもの頃、昆虫採集やタコの飼育の経験が今の生態系を考えることにつながっている。 タコの飼育からの経験 とても難しいタコの飼育の失敗と成功。環境をつくることの難しさと成功体験を得る。 カメレオンの飼育にみる持続可能性 ただ餌を与えるのではなく、餌になる虫までも同じケージの中で育てながら与えるという方法。ひとつの飼育環境の中でも生態系の循環が見られることに感動。


 

中学校高校時代


京都の学校へ通う。鴨川文化に出会う。鴨川デルタに見られる学生たちのアクティビティは、地域独特のもので他の地域にはなかなか見られない独自の文化になっている。 河川敷に見られる、雑多のものが集まって調和している景観も独特。夏には納涼床が設置されて、お店から漏れる明かりが河川敷の道を照らす。そこには等間隔を空けて座る人たちや、路上ライブをする人など多様な人たちがいる。川というものを中心に文化が集まってきている京都を代表する象徴的な風景で、それが今でも大好きな風景である。


 

武蔵野美術大学時代

建築学科に進む。 「居場所」をつくる演習など、建築に加えて、空間をデザインする経験があった。 そんな中、エンドウケンヤさんのゲスト講義でシンガポールのビシャンパークのプロジェクトを知る。ランドスケープという言葉は知っていたが、この講義を聞いて、さらにランドスケープの分野への興味が増す。建築ではあまりしないような表現のダイアグラムを見てインスピレーションを受ける。また、土壌のことまでも含めて設計することは、少年時代に育てたテラリウムの環境をつくった経験と重なった。 その後、ランドスケープ系のゼミに所属し、設計課題に取り組んだ。築地市場跡地に自然が戻ってくるような場所を提案した。 卒業制作では、淀川沿いのゴルフ場の公園化を提案した。いずれの提案も、人が手を加える場所(人工物)に自然が生まれるという共通点があり、人工物も自然環境の一部になりえると考える。 人がつくるもので生態系にポジティブなインパクトを与えたいという思いから、もっとランドスケープを学びたくなり、トロント大学への留学を決める。


 

留学生活


なんでトロント大学?


ASLAのStudent Awardを受賞している学生が多く、その上で自分が学びたい興味の分野で受賞している人がいた。 施設が充実している。ランドスケープ学科と建築、アーバンデザインが同じ建物で学ぶ。 トロント大学が特に力を入れている分野は、

  • Creativity

  • Theory, Philosophy

  • Beyond the Area

  • Indigenous Study

  • Resilient City




 

トロント大学のカリキュラム


Studio 1 対象地で見つけた模様を抽象化してコンセプトに、対象地に提案を行っていく。コンクリートやアスファルトの道路に植栽を施していくようなアイデアを提案。Gradingの授業では、Studioでの提案を実際に扱って等高線を描いた。 歴史の授業でも座学だけではなく、歴史を踏まえてデザインの提案を行った。 Studio 2 歴史を踏まえたMemorial/Placemakingなデザイン。 断面図で見た現状の植物を詳細まで描くことに感動を覚える。コピペで同じ樹種を使うこともできるが、ひとつひとつを丁寧に描くことで現況を詳細に伝えることができる。 Studio 3 都市のデザイン。建築学科、アーバンデザイン学科の学生とのコラボスタジオ。それぞれがそれぞれの強みを生かして、役割分担を行った。建築が建物のタイポロジーを、ランドスケープとしてはインフラを中心に担当した。 2年目 クライアントを想定した実践的なエクササイズ。交渉、図面作成、素材調達までを想定した。 リニアパークをつくる課題で、「フェンス」に注目。空間を分断してしまっているフェンスを人が介入することで、人が集まれる空間に。都市は更新されていくときに必ず廃材が出る。その廃材を有効活用することでまちの成長とともにフェンスも成長していく。また、フェンスがまちの記憶を蓄積してくれる。フェンスを取り巻く空間が、フェンスの機能は保ちつつ持続可能なパブリックスペースとなって成長していく。 Miami市とのプロジェクト 実際の自治体と取り組むプロジェクトもある。


 

トロントの風景

Scarborough Bluffs 崖から落ちた砂が潮の流れによって堆積したところが島になっている。

トロントも抱えている洪水の問題 様々なランドスケープ系の会社がResiliencyを高める提案を行っている。 頻繁に氾濫しているDon River周辺にはCorktown Commonなど洪水緩和機能も持った公園が誕生している。 Sugar Beach Park 砂糖工場が隣接する浜辺の公園。 Tommy Thompson Park 廃材を利用した人工の埋立地公園。 The Fishway, Hamilton オンタリオ湖と湿地帯の中間に位置する魚を捕まえる施設。捕まえた魚を手作業で在来種と外来種に分けることで生態系を管理している。 Black Oak Savanna トロントの原風景。先住民時代から火を使った森林管理をしていた。

 

コロナ禍における話

トロントのまちからも人が激減した。 現在は経済活動は再開したが、飲食店はテラス席などの屋外席のみの営業。路上駐車場に飲食スペースを仮設して対応。 Sidewalk Toronto (GoogleによるSmart Cityのプロジェクト)の中止。 一方で公園には人が集まり始めてきた。 オンライン中心の生活になって友人がオンラインで誕生日パーティーを開いてくれるといった嬉しい誤算も。

 

これからの話

ランドスケープを軸に分野の垣根を越えてデザイン・設計をしていきたい。 ランドスケープはどんな分野でも入ってこれる。むしろ新しいアイデアは意外なところから出てくることがある。どんどん挑戦していきたい。

 

質疑応答


Q. 留学をしようと思ったきっかけは?海外経験はあった?(Nさん)

A. ケンヤさんの講義で海外という選択肢を得た。研究というよりかは演習を重視する教育を受けたかった。 海外経験は旅行程度だったが、トロント大学へはCampus Visit した。 Q. 建築やアーバンデザインとのコラボスタジオで得た学びや課題はあったか?(Mさん)A. 各分野、それぞれの軸はあるけれど建築でもランドスケープのことを勉強して理解をしようという姿勢が見られたことに感動した。相手の分野への尊敬が見られた。 Q. 白黒のドローイングは意識しているのか?教授から言われて印象に残っていることはあるか?(Nさん) A. 先生から白黒は指導された。色がなくてもまずは図面が描けないと仕方がないのでそこを意識した。色がなくても線幅や濃淡、テクスチャなどで表現できることは色々ある。 指導の中で印書に残っているのは、現況図を描くときにいかに「うそ」のない物を描くのかということ。詳細にリアルに描くことで、サイトのコンテクストを確実に伝えることができる。 Q.およそ20年前までは生態系に関わることでLA学科が教えていたのは植物のアイデンティフィケーションくらいだったが、現在はもっと広い意味でのEcology全体を教えるのはスタンダードになってきたのか?(Tさん) A. 生態系に関する授業は必修になっている。生物多様性の問題も学ぶ。トロントではGreen Ashの植えすぎによる問題があることなども学習した。 Q. 駐車スペースをレストランのテラス席にしているのか。こういう取り組みはよく見られる?(Nさん) A. おそらくほとんどが駐車スペース。都心部ではこういった「パークレット」のような駐車スペースを利用する動きはあった。 Q. 海外へ出たからこそ気づいた日本の魅力と改善すべき点は?(Hさん) A. トロントと比べて自治体や民間が都市を改善していく動きが遅い。 魅力は文化。固有の文化があることそれ自体が魅力。鴨川文化に見られるように、一見すると雑多なものが集まっている様だが、川という自然と人と人工物が調和している文化。 Q. お祭りはある?(Hさん) 先住民のパレードは?(Tさん) A. お祭やパレードのようなものはある。PrideTorontoと呼ばれるLGBTのコミュニティーの多様性を祝うパレードは有名。大学としては先住民の文化を守っていく動きがあるが、一般の中では歴史が隠されていた背景があり、地元の学生でも先住民の方々の歴史について知らないことも多い。文化の継承も大きな課題の一つ。 Q. 最近のEcological Urbanismはトロントを発端にしたという認識だが、自治体・大学・民間がうまく回っている?ハワイでは大学が言っても自治体が聞いてくれない。住んでる人たちはどう思ってる?(Iさん)

A. トロントではランドスケープ主導でできているから、これが当たり前になってきている。教授が市民に向けて発表する機会も多い。ランドスケープの市民権が大きい。市役所の人が教えにもきている。 行政の方が積極的である。事例がたくさんあるまち。必要だから増える。この蓄積がランドスケープの認知度を高めている。(Eさんより) Q. グループワークの頻度は?学生数は?(Aさん) A. グループワークは先生によって頻度は変わるが、1学期に一回以上はある。学生は20-30人程度。そのうち半分弱が留学生で、留学生の半分以上が中国から。 Q. オンラインに切り替わってもグループワークはあったのか?(Nさん) A. あった。二人組でZoomを使って会議を繰り返した。 Q. 人工物と自然とあったが、テクノロジーとはどう向き合うのか。トロントではスマートシティはどうなっている?まちに何かスマートシティ的な要素は見られるか? A. Googleのプロジェクトが頓挫したが、現時点では特にそういった要素は見られない。 Q. GIS的なアプローチではどうか。データの利用には常にプライバシーの問題が絡む。公的なサービスが充実している分、家賃や生活費は高いのでは?(Mさん) A. 都心部の大学寮でシェアでもおよそ8万円くらいの家賃。少し離れれば値段は下がるがそれでも高い。物価は高い。 スマートシティについて、日本で実務をしていると実感としてはランドスケープはまだ介入できていない。技術が先行して「地域性」が見られないことが多い。(Tさんより) データの使い方によってはランドスケープも参画できる。例えばマイクロクライメイトの様な局所的に環境的負荷がかかっているところがデータから読み取れれば、それを根拠に植物を利用した空間を提案できるのではないか(Mさん)


最後に近藤さんからコメントランドスケープは楽しい! どの分野を勉強してもランドスケープに帰ってくる!どんどん外へ出て行こう!

 

ライター政金より


北米に位置しながらヨーロッパやアメリカからの影響を受けて独自の文化を形成してきたカナダの中心都市であるトロント。そんな大都市ながらも自然と近く刺激的なまちで学べている近藤さんが羨ましく感じました。大学施設が充実している様子や受賞者の数の多さなど、ここで学べば相当力がつくだろうし、いい仲間ができるだろうとも思いました。近藤さんの興味である人工物がつくり出す自然(生態系の一部としての人工物)や、なるべく廃材を使って持続可能な都市を提案していく姿勢はこれからのめまぐるしく変わっていく世界において重要な考え方だと思います。同年代でこれほど頼もしい仲間がいることに感動を覚えるとともに、自分も負けていられないなと身が引き締まる思いを与えてくれる、そんなスーパープレゼンテーションでした。いつかトロントや京都を案内してください。ありがとうございました。


政金裕太













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