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U2W #3 Report

更新日:2020年7月12日



第三回のスピーカーはヒューストン在住、政金裕太さん ルイジアナ州立大学で学ばれたのちに、ヒューストンのランドスケープ設計事務所で1年間働かれた経験について共有していただきました。 #3 Summary スピーカー:政金裕太 ライター:中島悠輔

●ランドスケープを学ぶきっかけ 青山学院大学に入学する際に、東日本大震災を経験し、災害に強い都市のあり方に興味を持った。 ルイジアナ州もハリケーンカトリーナなど災害の多い地域で、レジリエンスについて学ぶのに良い場所だと思い、ルイジアナ州立大学に進学。

●ルイジアナ州立大学・ヒューストンでのお仕事からの学び 大学では、1年目は手描き・デジタル表現など基礎的な内容を学び、年を重ねるごとに応用的な内容を学んだ。卒業制作では、地域特有の水系、Bayouとレジリエンスについての提案を行った。

インターンやお仕事では、レジリエンスに関する研究プロジェクトに参加したり、都市スケールのプロジェクトに参加し、学びが大きかった。

●コロナとアメリカ南部 会社では仲間とのコミュニケーションを密に取る工夫がなされ、素晴らしいと思った。 また、市がコロナとまちづくりに関するコンペを実施するなど、素早い対応がされている。

●政金さんよりメッセージ 「目にうつる全てのことはメッセージ」 たくさんの場所に行き、経験をする事が大事。


 

今日の内容

  • 政金さんについて

  • アメリカ南部のランドスケープ=水系とレジリエンス

  • ランドスケープ留学までの道のりと大学での学び

  • コロナとアメリカ南部ランドスケープ

  • 質疑応答

 

政金さんこんな人


  • 神奈川県出身

  • 高校では野球男児。

  • メディアを学びに青山学院大学へ入学したが、入学年に東日本大震災を経験し、自然と人間の共生する空間に興味を。

  • 青山学院大学総合文化政策学部ではGISを研究。

  • 在学中に震災復興のプロジェクトに関わり、ランドスケープを学ぶ道を模索。


日本と同じく災害が多く、様々な対策についての研究・取り組みが進んでいるルイジアナ州立大学に進学し、MLAを取得

 

アメリカ南部のランドスケープ=水系とレジリエンス


New Orleansのランドスケープ


New Orleansは商業・観光の街(ウォルト・ディズニーも憧れる街)



ルイジアナの自然環境

ミシシッピデルタの湿地帯の環境はルイジアナの典型的な自然環境

MarshやBayou(隣あう水系によって流れが変わる程流れが遅い川)といった環境がルイジアナの自然。



Baton Rougeのランドスケープ

ルイジアナ州立大学が位置するBatonRouge(ルイジアナ州の州都)は大きな木がたくさん植えられ、木陰の多いランドスケープ(気候が暑いため)


 

ランドスケープ留学までの道のりと大学での学び

背景

ハリケーンカトリーナの被害もあるなど、Resiliencyについての意識が強い大学であるため、選んだ。

ルイジアナ州立大学に入学した2016年にもルイジアナにて歴史的な大洪水に遭い、運命的なテーマだと感じている。

大学での学び

3年コースに参加していたため、ランドスケープ以外の分野から来ている人が多く、様々な知識を交換しながら学んだ。


 

大学での学び

1st semester

平面、立体、白黒、濃淡、明暗などあらゆる表現技法を学ぶ。

キャンパス中庭を対象にデザイン提案

2nd semester

Baton Rouge ダウンタウンの空き地に公園を提案する。

模型でスタディをし、デザインに落とし込んでいく。

スタジアムの公園をデザイン。

3rd semester

2016年の大洪水を踏まえた水にまつわるランドスケープ。

水にまつわる空間への度重なる調査と体験。

フィールドワークが非常に多いスタジオで、実際の空間に触れる大切さを学んだ。

4th semester

都市の中のランドスケープ。

ニューオーリンズの公園を調査し、それぞれの公園に点数をつけたり。

5th Semester

Advanced studio。

ポルトガルのタビラという都市の塩田風景について考える。

森から海まで一体的に考えるプロジェクト。

潮の満ち引きを利用した塩田、さらにその環境に根付いている生態系について考えた。


6th Semester

スタジオ的な形のプロジェクト、あるいは論文を書く

政金さんは自分でテーマ・対象地を決め、デザイン・論文両方やった。Baton Rougeの1つのBayouを対象地とし、Resiliencyについて考える提案を行った。




 

インターン、研究スタジオ、就職先での学び

Baton Rouge Park and Recreation

にて公園の整備状況について調査を行った。

CSS(Coastal Sustainability Studio)

自身の災害への意識に非常に近いテーマを扱うスタジオの研究調査プロジェクトに参加でき、また、他分野の学生との協同だったので興味深かった。

Reich Landscape Architecture

LSUのLA学科の創始者の方が作ったオフィスにて就職。

ルイジアナ州立大学は卒業生との繋がりが強く、人脈からアメリカ南部の会社に就職する学生も多い。

Asakura Robinson Company

都市計画やアーバンデザインまで幅広く手掛ける会社に就職。

学校の校庭や河川沿いの貯水池公園の設計をするなどのプロジェクトに参加。


 

コロナとアメリカ南部ランドスケープ

会社の取り組み

Asakura Robinson Companyに勤め始めてまもなくコロナの事態に巻き込まれ、Personal Officeを確保することを第一に動いた。その次に、Officeコミュニティでのコミュニケーションをしっかりとる動きが見られたが、その働きかけが充実していて素晴らしいと思った。



近所の魅力の再発見。

徒歩で行けるランドスケープ空間の貴重さを感じ、そういう空間への平等なアクセスを実現することが自分たちの役割では。



 

都市全体の動き

Baltimore市ではコロナに対するランドスケープ・都市計画的な提案を募集するコンペが開かれ、6月中ばには公開されている。その動きの速さに素晴らしいと感じている。


City of Baltimoreより

 

政金さんからのメッセージ

「目にうつる全てのことはメッセージ」

自分の目の前に広がる景色にはたくさんの意味がある。様々な経験をして多くの景色に触れるよう。



 


質疑応答

Q. 社会とのつながりを意識したプロジェクトが多いのか。(Eさん)

A.

社会に実装にするというより仮想のプロジェクトが多いが、「州知事の庭の設計を考えてくれ」など、街が小さいので大学の影響力やOBとのつながりが強い。

卒業後に就職先を探す際に東海岸や西海岸へ行くというよりはOBとのつながりから、南部で仕事をすることが多い。


ハーバードでは、理念的な考え方を提案することが多く、地元のコミュニティとつながることが少なかった。シンガポールでは、コミュニティの人と絡みながらプロポーザルを作っていくということを意識している。


Q. 人の避難のシミュレーションをする際にどうデータを取ったのか。(Iさん)

A.

建物外はケータイの位置情報を利用した。

建物内は大学の建物を利用してシミュレーションをしているので、履修データを基に一つの教室に何人学生がいるのかがわかった。


2016年の洪水のデータもGISで取れる。コミュニティに聞くと、GISのデータとずれる部分があり、データの信憑性については悩む部分がある。

Q. レジリエンスに関するプロジェクトが多かったが、現場のデータはサイトで取ってきたデータ、GISで取ったデータ、文献データなどあると思うが、どうやってデータを取ってきたのか。(Iさん)

A. 

2016年の洪水のデータもGISで取れる。コミュニティに聞くと、GISのデータとずれる部分があり、データの信憑性については悩む部分がある。

Q. GISの学習はランドスケープ留学をする上で連続性のある学びになった。(Uさん)

A.

関わりが非常にあった、データの収集やビジュアライゼーションで使うことがあり、大学の授業でGISを使うことがあったので、他学生に教えることがあり、自分のアイデンティティになることも。仕事の中では、使うことは減ったが、シティプランニングなどの分野では使うこともあった。


Q. 一度解除した後にもう一度お願いすることが難しいな、と感じているが、アメリカはどうなのか?(Uさん)

A.

最近、また規制が強くなり、友人と会う約束を取りやめるということが。


Q. 就職先について、どう決めたのか。譲れないポイントがあったのか。(Aさん)

A.

水関連のレジリエンスについてやりたいと思っており、住宅のみをやっている事務所はレジュメを出さなかったりしていたが、落ちてしまうことがあり、今はどの事務所でも学ぶことがあるので、選ばないということを意識している。

インターンでも良いから働かせてください、という姿勢が良いのではないか。


OPTというシステムは時間に制限があるので、人との繋がりを大事にして就職先を探すと良いのでは。

Asakura Robinsonはインターンを結構雇っている。今もリモートでやっている。逆に可能性も広がったのでは。


Q. 文系からランドスケープという分野に移るのは大変だったか(Fさん)

A.

文系という分野からランドスケープに踏み切れた理由はアメリカの教育システムの門戸の広さ。技術系の大学に行っていなくても受け入れてくれる3年コースという門戸の広さが良かったと思う。


Q. Baton Rougeで住んでみて良かったこと、辛かったこと(Fさん)

A.

ルイジアナ、黒人の方が多い

2016年にバトンルージュでも黒人男性が白人警官に殺されてしまうことがあった。大学周りは平和だが、車に轢かれたり、自転車を盗まれるなど、交通に関するアクシデントがあり、日本ではあまり体験しないことがあった。

郊外へ行くと、現代では信じられないような差別がいまだに残っているような地域でもある。


Q. ヒューストンは車社会。車中心の社会は変わってきているのか。(Fさん)

A.

現状は車中心の社会だが、Asakura Robinsonがリバブルシティなど、歩行に意識をしたシティプランニングを提案している。

Q. 文系の強みとは?ランドスケープアーキテクトを目指しているが、大学3年で今のうちに勉強しておくことは? (Mさん)

A.

クリエイティブな人材との協働を促すような大学だったところが良かったと思う。

学際的でいろんな分野の人とコラボレーションをする分野なので、「あなたは何をやっている人なの?」と答えられる強みを持っていると、アイデンティティになり、大学でも社会でも武器になる。

Q. インターンやSTEMのビザで働くというチャンスの中で、どういうことを学んだか詳しく知りたい。 (Yさん)

A.

STEMの学科を卒業していると3年間のビザ、そのほかは1年のビザがもらえる。

多くのランドスケープの分野の大学がSTEMの分野として認可されてきているが、政金さんは卒業された後にSTEMとして認可されたため、1年でビザが切れてしまった。

Q. 今後、日本ではどういう活動をしたいのか。 (Kさん)

A.

働けた経験は短いが、得られた経験はユニークだと感じており、災害という分野に対してグリーンインフラや、ウォーターマネージメントなどを学んだので、そういった経験を生かしていきたいと考えている。

Q. ルイジアナは日本ではどういう環境に近いのか。 (Kさん)

A.

海抜0メートル地形。

東京の下町や新潟の信濃川など、川が氾濫したら広がってしまうような場所と地形的に似ているのではないか。堤防が高くなり、街が低くなっている環境。

Q. 被災後はどういう活動が起こっているのか。(Kさん)

A.

コミュニティ1人1人の意識が高く、地域住民の中での活動が盛んだと感じている。

災害に遭いやすい地域に住んでいるという認識が強い。

Q. アメリカの大学院に進学したいと考えているが、エッセイは大事だと聞いているが、なぜこの学科に書くのが大事と聞いていて、Campus Visitするべきだと聞いたが、この状況では厳しいがどう情報収集するべきなのか。(Yさん)

A.

自分も情報収集で苦労した。大学のホームページを見た。

CSSという災害関係のプロジェクトをやっているということを知ったので、自分の興味と近い分野をやっていると判断した。


教授陣と面識を持つことが大事だが、自分が入ったタイミングで教授陣が入れ替わってしまい、エッセイで名前をあげた教授からはレクチャーをあまり聞けなかったということもあった。

大学案内に作品集があったが、自分で訪問して面接してもらったことがある。そういう大学に受かることが多かった。作られている書籍や学生の作品集を見て、自分が学びたいことがあるのかを検討してみると良いと思う。

大学本試験の面接までの仕込みが結構大事なのではないか。

GSDに行きたいなど、希望を書く人が多いので、逆に自分がどういう強みがあるのかオンライン面接で自分をどうアピールするのか

Q. ランドスケープアーキテクトとしてのやりがいとは?

A.

先輩のデザイナーから自分が設計したメモリアルパークでプロポーズをしているカップルがいて、人の人生の節目を作っていけることに感動したという話を聞き、自分も人の思い出を作れる空間を設計したいと思っている。


 

ライター中島より

第2週のカジハラさんに引き続き、アメリカのお話を伺いましたが、バークレーとはまた違うアメリカ南部の自然、ランドスケープにとても引き込まれました。 大学進学の際には文系の道に進まれていた政金さんが災害という日本において非常に重要なテーマを模索するうちに、ルイジアナ州立大学でランドスケープを学ばれることになったというお話を伺い、ランドスケープとはやはり裾野の広い分野であるな、ということを感じました。今後もランドスケープが様々なバックグラウンドを持った人を受け入れながら発展していくと良いなと感じております。

中島悠輔



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