今回はアメリカ、UCバークレーでランドスケープを学ぶカジハラさん。
プレゼンテーションは美しい景色や、現地のご友人たちとの楽しそうな写真、
そしてカジハラさんの慎重で優しい言葉の数々がとても印象的でした。
カジハラさんのお話の内容をノートに簡潔にまとめてしまうと、
ニュアンスとして伝わらないことが多く、あまり意味がないかなと思いましたので、
今回のノートは、”情報”として留学の参考になりそうなことに加えて、
ライター吉本(現在イギリス留学中)が個人的に印象的だった部分については、
カジハラさんのお話の内容と、わたしの感想を書かせていただきました。
海外生活に関して、カジハラさんのお話に共感する部分がかなりたくさんありました。
#2 Summary スピーカー:カジハラカズミツ ライター:吉本文香
●ランドスケープを学ぶきっかけ 友人の紹介でバークレーのサマープログラムに参加し、同じ志の仲間に出会うことができた。
●UCバークレーでの授業 初歩的なことを教わって、あとは自分で考えなさい、というアメリカ的なスタイル。 初年は基礎的なグラフィックスキル、2年目はランドスケープの歴史や植物について詳しく学んだ。
●カジハラさんからのメッセージ
・本気のなんとなく
海外に出るほど本気になれるかな?、と考えていたが、やはりやりたいことを追い求めていったら海外にいた
・ネガポジ論
コロナなどネガティブなニュースが多いが、ポジティブにアメリカで生きていることを伝えていきたい
・LIFE=TRAVEL
アメリカで生活していると同時に、それ自体が旅行に来ているようなもの。
今日の内容
カジハラ・カズミツさんについて
カリフォルニア、バークレーってこんなところ
サマープログラム
UCバークレーでランドスケープを学ぶ
ランドスケープ留学までの道のり ”本気のなんとなく”
ネガ・ポジ論
アメリカでの生活
現在のアメリカの状況(コロナや人種差別問題等)と考えたこと
質疑応答
88年大阪生まれ。
モットーは、しっかり食べてよく眠る。
19年よりカリフォルニア州バークレー在住。
UC Berkeley環境デザイン大学院Landscaep Architecture 修士在学中、北大農学院生態系管理学修了の後、自動車メーカーにて環境車の商品企画に2年間従事。転職先のナーサリーにて花材調達・輸出入を担当し、ランドスケープ留学を志す。ヒップでオーセンティックな庭師の元で、庭のいろはを教わりながら、留学準備を進めた。
カリフォルニア、バークレーってこんなところ
バークレー=カリフォルニア州バークレー市
年間の気温差が小さく、日本よりも涼しい。
雨季と乾季がはっきり、長引く乾季で山火事が起きたり、気候変動の影響を肌で感じる。
→ランドスケープへの期待感、責任感が大きくなっているのを感じる。
サマープログラム
友人の紹介で知った、
UCバークレー主宰のサマープログラムに参加した。
実際どんな勉強ができるのかわからなかったので、とりあえず行ってみようと思った。
試験があったが無事に合格して参加した。
同じ志を持った仲間に出会えて良かった。
その仲間たちが各々の大学に進学しているので、今もたまに連絡をとっている。
UCバークレーでランドスケープを学ぶ
カジハラさんの学ぶ学部
=College of Environmental Design (CED)
ランドスケープアーキテクチャ、建築、シティプランニングの学科がある。
学部棟は結構古く、2つあるエレベーターは片方止まっているとか。ランドスケープは7階だそうです。
Studioのカジハラさんのデスク。現在はコロナで閉鎖されてしまったそうです。右奥に見えるのはハンモック…?
カリキュラム
初歩的なことを教わって、あとは自分で考えなさい、というアメリカ的なスタイル。
【2019年秋学期】
スタジオワークに慣れる。
道具や素材といったマテリアルに慣れる。
Adobeソフト、3Dソフト、GISを使い始める。
初歩的な、生態学的知識を身につける。
【2020年春学期】
過去のランドスケープの事例を知って、掘る。
サイトの要素を抽出して、自分なりに解釈する。
カリフォルニアの植物を同定できるようになる。
世界のランドスケープの歴史を知る。
Guest Lecture や Studio Visit
屋外でのスケッチのレクチャーの様子。
フィールドに出ることも多いみたいです。空が青さが、カリフォルニア!
ランドスケープ留学までの道のり ”本気のなんとなく”
「なぜ庭師ではなく、ランドスケープに興味を持ったか?」という質問に対して
ナーサリーで働いていた時に、自分の人生について考える時期があり、とても悩んだ。
海外に出て、遠くから世界を見渡したい、
ランドスケープを海外でやってみたい思いはなんとなくあったが、
海外に出る対価がわからず、気合いが持てずにいた。
質問の答えにはならないかもしれないが、
なんとなく思っていたことを、
今になって”本気”になれたから、今に至る、という感じ。
”本気”というのは人それぞれだと思うが、
フルートを突き詰めて東京藝大からパリに行った兄の影響が大きい。
本気でないと、海外に行ってはいけないと思っていた。
今アメリカに来て学べているのは、
自分が本気になっている証。
吉本より
カジハラさんの真摯な言葉がとても印象的で、
たくさんの苦悩の末に、決意されたことが伝わってきました。
”海外へ出ること”に対する思いや、ハードルの高さは人それぞれで、
不安もあるし、時間もお金もかかるので、当たり前だと思います。
わたしは行き当たりばったりも良しとする性格で、環境にも恵まれていたので
大学卒業とともに、半ば勢いでイギリスに来てしまいましたが、
カジハラさんは、日本で様々な経験をされるうちに”本気”になった、とのこと。
きっとどちらがいいということではなく、
自分が納得しているかどうか、が大切なのだろうと思います。
”とりあえず” 海外に出てみたら、たくさんの発見があって、
そこから情熱が生まれることもきっとあるでしょうし、
時間をかけてしっかり考え、確信を持って、”本気”で海外に行くからこそ
しっかりとアンテナを張って、学びをより深められる、とも言えるかもしれません。
海外に行く時期について、
学生のまま行った方がいいのか、一度社会に出てからにするのか、
迷っているという方も多い印象です。
どの道を選んでもそれぞれに得るものがあるし、本当に人それぞれだと思います。
どちらが将来的に有利か、価値があるかを考えるというより、
今の自分がどうしたいかについても、
(例えば、行動したくてウズウズしているのか、もう少し確信が欲しいのか)
しっかり考えてみるといいのかもしれないですね。
ネガ・ポジ論
海外に住んでいると、自分ではどうしようもないことがたくさんある。
特に現在は、コロナのことやトランプ大統領のことなど。
まだアメリカに来て1年だが、キツイ経験も正直ある。
でもネガティブになっても仕方がないので、
今日はポジティブな部分を皆さんに共有したい。
”勉強しに行ったはずなのに、楽しそうやってんな”
”海外に行ってみたいな”
と思ってもらいたい。
仲のいい近所のおじさんだそうです。東京オリンピックTシャツどこで手に入れたんだろう…
友人たちと、焚き火。いい雰囲気です。
吉本より
とても共感しました。
特にコロナは未曾有の”どうしようもなさ”で、
初めは考えるほどにやるせなさを感じる日々でした。
しかし、そういう状況に直面した時も、
ポジティブな面を見つけようとすることはとても大切で、
自分の考えや世界の見方がガラリと変わったり、
日常の些細なことへの発見や、そのありがたみを痛感します。
わたしもきっと日本に帰った時、
「よりによってイギリスでコロナに遭って、大変だったね!」
とたくさん言われると思いますが、
「実際そうでもないんだよ、結構楽しんでたよ!」と言えるように
ポジティブに行こうと思います。
アメリカでの生活
LIFE=TRAVEL
留学に来ているということは、
アメリカで生活していると同時に、それ自体が旅行に来ているようなもの。
コロナでどこにも行けない状況だが、
バークレーでの生活を楽しみたいし、楽しんでいるつもり。
”TRAVELING WITHOUT MOVING”
食生活
地元で人気のスーパー”バークレーボウル”
野菜や果物の取り揃えが豊富で、日本食もあって助かる。
西海岸はアジア系、ヒスパニック系人口の比率も大きいので、
食生活の面では不自由したことがない。
スーパーの様子。野菜と果物が豊富です。知らない食べ物がたくさんありそうですね。
Alien=異米人?
まだ一年しか住んでいないせいか、まだ”よそ者感”が強い。
カリフォルニアはいろんな人種の人がいるので、見た目でぎょっとされた経験はないが、
気持ち的に、異米人、Alienなのだと感じる。
サマープログラムで出会った仲間と一緒にいる時は、
仲間に入れてもらえている、よそ者ではないと感じることができる。
HOMEを見つけたい
本の紹介
濱野ちひろさんの著書『聖なるズー』
”誰かにとってある誰かが特別なのは、
共有した時間から生まれるその人独特のパーソナリティに魅了されるからだ。”
自分のパーソナリティは、アメリカに来て、
みんなと関わる中で醸成されていくものなのだろうと思った。
よそ者だけど、みんなと関係を築いて、HOMEを見つけたいと思っている。
吉本より
留学するということは、
海外の学校に通うということだけではなく、
”海外に住む”ということです。
カジハラさんの仰ったように、
日常が旅行になりうるし、
逆に、イギリス生活2年目も終盤のわたしは、
旅行が徐々に日常になる感覚も覚えています。
いくら授業がオンラインになってしまっても、
日常生活の中で触れる文化の違いもたくさんあるし、
実際留学に来て、住むことで得られる経験は、何にも代えがたいと思います。
ランドスケープって、日常生活の中の公共空間を設計する分野なので、
ユーザーとなりうるいろんな人の気持ちを想像できる能力がとても大切だと思います。
その点で、海外で生活する中で感じた
”よそ者感”やそこから徐々に”HOME”に変わっていく感覚は、
それぞれの土地の文化を尊重しながらも、inclusiveなデザインをする上で、
とても重要な感情で、しっかり覚えておきたいなと思いました。
現在の状況と考えたこと
授業のオンライン化
オンライン授業も一長一短で、
時間に余裕が生まれた側面もある。
miroやzoomを使って、授業や議論が展開されている。
バークレーは今年の秋学期は完全オンラインで進められることが決定した。
一体どうやって楽しんでやっていこうか。
スタジオならではの刺激や学校ならではの楽しさが奪われてしまったと感じている。
miroとzoomを使った講評の様子。
肌で感じたコロナや政治的な情勢
バークレーは政治的なムーブメントがアグレッシブな地域。
危ないし、コロナにもかかりたくない。
近所の黒人の方々がプロテスタントの一環で空砲を打ったりする。
銃撃事件も身近に起きた。
正直とてもビビっている。
このような時期だからこそ、アメリカにいることを感謝すべきかもしれない。
体験できている、皆さんに伝えられることは貴重だと思う。
なんとか自分ごとにして、思い続けたい。
情報の切り取り方
実際日本でアメリカのどんな情婦が出回っているかわからないが
嫌なことももちろんあるけれど、いいこともあるし、
情報は切り取り方によって見え方が変わる。
だからなるべくポジティブな面を今日は紹介したかった。
自分はバイアスをかけずに楽しんでいるつもりでいる。
プロテストやデモも、穏健派もいるし、
実際は危ないものばかりではない。
風景の切り取り方
コロナ状況下で、”風景の切り取り方”についても考えるようになった。
歩いていける、自転車でいける場所に外出が限られて、
今まで見過ごしていた身近な風景も、見え方が変わった。
吉本より
コロナウイルスの影響で、確実にこれまでの”普通”は一変しました。
世界のどこにいたとしても、皆さんそれぞれに感じていることだと思います。
しかし、カジハラさんのお話を通して、
どんな状況であろうとも、
今自分が ”今そこにいること” にしっかりと向き合えば、
必ず何か発見があり、成長できるのだろうと思いました。
皆さんも、
留学に来たけど、
留学を控えていたけど、
思い通りにいかないことばかりかもしれません。
それでも希望を持って、
今しかできないことを一生懸命やるしかないのだと思いました。
とても勇気の出るお話でした!ありがとうございました!
最後に吉本より
まだ2回目ですが、ランドスケープや留学に関する情報はもちろん、
プレゼンや質疑応答から伝わってくる、
プレゼンターごとの人柄や個性も、U2Wの魅力だと感じています。
ぜひ、U2W、リアルタイムで会いにきてください!🌿(吉本)
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